〜蒼い時間の中で〜
 その声に振り返って見ると、ナンパ目当てと思われる男が数人、それから友達を守るべく立ちはだかる綾乃の姿がそこにあった。
「お〜さすがは生徒会長だな」
 男たちは綾乃の怒りなど気にも留めず、それどころかにやけてからかっていた。
「あなたたち。はっきり言って迷惑なんです。止めてください」
「お〜怖い怖い。でも怒った君も可愛いね」
「だったら君だけでも俺達は構わないんだぜ?」
 どちらとも折れる気はないため、話は平行線のままだった。
「助けに行くべきかな? でも一樹がいるし……っていねえし」
 周囲を見渡して見たが一樹の姿がなかった。何か用事でも頼まれたのだろうが、運が悪い。
「ったくよ? お前だけでも良いって言ってるだろ?」
「そうだぜ。いい加減俺達と行こうぜ」
 男の一人が綾乃の腕を強引に掴み、引き寄せた。
「痛っ。嫌よ! 離してってば!」
 掴まれた手を引き離し、綾乃は男たちを睨み付けた。
「てめえ! 調子に乗りやがって!」
 男が腕を振り上げる。綾乃は衝撃に耐えるべく、強く目を閉じた。
 しかしいつまで経っても来る気配がなかった。
「女の子に手を出すってのはやり過ぎじゃねえのか?」
 その声に綾乃はそっと目を開けた。
「………白石君?」
 目の前にいつの間にか立っているクラスメートの拓也を見て、綾乃は目を丸くさせ驚いていた。
 拓也の手は男が振り下ろそうとしていた腕を、掴んでいたのだ。
「何だよ! てめえは」
「お前ら自分の顔を鏡で見たことあるのか?」
 男数人を前にしても拓也は、動じる事がなかった。それどころか男たちの方が動揺していた。
「五秒くれてやる。……失せろ」
 拓也が掴んでいた手を離し、五秒をカウントし始めた途端、男たちは一目散に逃げ出していったのだった。
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