〜蒼い時間の中で〜
「ったくよ。ナンパなら俺の知らないところで、やれっての」
 男たちの背中が完全に見えなくなったのを確認すると、拓也は振り返り綾乃の方を見た。
「大丈夫か? 怪我とかはなかったか?」
「ええ。平気よ。怪我をする前に白石君が助けてくれたから」
 笑顔の綾乃は確かに学園のアイドルと呼ばれるだけあってか、とても可愛くて拓也も照れ隠しからあさっての方を向く。
「そ、そうか。なら良いんだ。でも大変じゃないか? 女の子だけだとさっきみたいなナンパが多くて」
「そうなのよね。さっきみたいな乱暴する人はいないけど」
 少しだけ肩を落とし苦笑する綾乃を見て、それがどれだけ多かったか予想出来た。
「ははは。そりゃ大変そうだな。特に明石は可愛いからな」
「な、何言ってるのよ。白石君」
 綾乃は顔を赤くさせ動揺するも、一瞬ですぐ元に戻ると拓也を睨んだ。
「もしかして…白石君もナンパしようってんじゃ、ないでしょうね?」
「……あのなぁ」
 肩をがっくりと落としている拓也を見て、綾乃はクスリと微笑んだ。
「冗談よ冗談。本気にしないの」
 悪戯っぽく微笑む綾乃を見て、拓也は小さくため息を吐いた。
「あやのー。これからどうする?」
 友達に呼ばれ綾乃は「ちょっとゴメンね」と言って、友達の方へと戻っていく。そして何かを閃いたのか、綾乃はこちらに振り向いた。
「ねえ? 白石君。これから暇だったりしないかな?」
「これから? まぁこれから休憩時間だから暇と言えば暇だが」
「じゃあ決まりね。ねえ白石君。これから私たちに付き合ってくれないかしら? 白石君がいたら何かと私たち助かるんだけど」
 綾乃の言葉に拓也はなるほどと気が付いた。つまりはしつこいナンパから守るための、ボディーガードをして欲しいと言う事なのだ。
「……まぁ良いぜ。どうせ暇だし」
 それになにより綾乃と一緒にいられるのだから、願ったり叶ったりだ。
「ありがとう。助かったわ。それじゃまずは白石君のオゴリでお昼ご飯を食べてからにしましょうか。良いでしょ? こんな可愛い女の子たちと遊べるんだから」
 その言葉に拓也は悪魔めと思いながら、厨房へと向かったのだった。
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