〜蒼い時間の中で〜
 店を出る時すれ違った一樹がショックを受けて、何やら恨めしそうな表情でブツブツと呟いていたが、強引に無視し拓也は綾乃たちと一緒に浜辺へと向かった。
 一緒に行くと言っても文字通り同行しているだけで、ワイワイと楽しそうにはしゃいでいる綾乃たちとは一歩引いていたのだ。
 相手は綾乃も含め五人に対して、男は拓也一人だけ。さすがの拓也もハーレム気分を味わって、女の子たちとワイワイ…とまでは出来なかったのだ。
「……はぁ。ったく、どうして引き受けちまったんだろうな。いまさらだけど」
 一樹だったらもっと上手くやれたのだろうが、拓也はあいにく中学の時にいた彼女以来、女の子とはあまり接する事が無く何をどうすれば良いのかさっぱりだった。
 それでもナンパ目的で近寄ってくる男連中に、威嚇し続けているおかげか綾乃たちに近寄る男連中の数が、ピタリと無くなったのだ。
 ボディーガードの役割は果たせた事を、満足すると砂浜の上にドサリと座り込んだ。
 綾乃たちは今現在、波打ち際で楽しそうにはしゃいでいる。
「ふぁ〜。眠たくなってきたし、時間までここで寝てようかな」
 大きな欠伸をして横になろうとしたところを、どうやら綾乃に見つかってしまったらしい。不機嫌そうな表情でこちらに近付いてきた。
「ちょっと! ボディーガードが寝ちゃってどうするのよ」
「どうせもう誰も寄ってこないし。暇だし。眠いし」
 二人が言い合いしているのを気にして、残りのメンバーもやってきた。
「だったら一緒に遊べば良いじゃない。それともまさか泳げないとか?」
「ん〜、だったらそれで良いよ」
「ムカッ! こんな可愛い女の子がたくさんいるのに、男の子なら喜ぶとこでしょうが!」
「なんで明石がキレてんだよ。ったくしゃーねーな。遊べば良いんだろ? 遊べば」
 拓也はため息を吐きながら、Tシャツを脱いだのだった。
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