キライなんです……
「蓮センパイ、部室に用事ですか?」

「いやちょっと、置いてるモノがあってね……」


蓮センパイは笑顔のまま、ふとあたしの顔に目をとめた。

きりっとした眉を寄せて、怪訝な顔になる。


「……どうした?杏奈」


――いけない。


「なんでもないです」

あたしはあわてて目元を手の甲でぬぐって、何ごともないようなフリをした。


「杏奈は何でもないときに泣くの?」

相変わらずのやさしい笑顔。

「……」


「……颯太となんかあった?」

「……」


思わず顔がこわばった。


「やっぱりそうか」

蓮センパイは涼しい声で言う。
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