恋愛短編集
ドア近くに達也がいる。
忘れ物でもしたのか、何故戻ってきたのかはわからない。
あたしは涙を拭いた。
泣いていたこと、気付いたかな。気付いてないといいな。
達也はあたしに近付いて言った。
「どした……?」
「、何が?」
「泣いてただろ」
「泣いてないし!目にゴミ入っただけだから~」
我ながら苦し紛れの嘘。
でも達也ときまずくなるのは嫌。
お願いだから、追求しないで。
「なんかあるなら、相談しろよ」
「う……ん」
馬鹿、優しくしないで。
「俺は聞くくらいならできるからさ」
あんたのせいで、こんなに苦しいのに。
「わかった……」
ああ、いっそもう、言ってしまおうか。
でも、そんなことをしたら関係は崩れる。
友達だから無条件でそばにいれる。
手は繋げなくても、肩を並べることはできる。
あたしにはそれが大切だから。
またこうして笑顔を作ってしまうんだろう。
「ありがと、達也」
end
◇
HYさんの「NAO」と友達の恋バナをもとにイメージしました!