LOVER'Sハウス


−一年前の入学式。




バカなあたしは、入学式が行われる体育館へ行く途中、迷ってしまった。



『もう!ここどこ!?誰か助けてー!!』



そう叫んで、その場に座り込むあたし。


とうとう、堪えきれなくなって泣き出してしまった。




一そんな時だった。




一つの大きな影が、あたしに覆いかぶさった。




「大丈夫??どうしたの?」

その声を聞いて、すぐに顔を上げるあたし。


目の前には、優しく微笑んだ男の子。



・・・同い年くらいかな?



「どうしたの?迷った??」

その言葉にコクンっと頷くあたし。言葉が出なかった。



「そっか。新入生だよね??」



『……うん。』


やっとのことで出た言葉。男の子はまた、微笑んだ。


「俺も新入生なんだ。名前なんて言うの??」


『えっと、香宮紗来です…。』


「紗来ちゃんね!俺は椎葉壱。壱でいいよ。さ、体育館行こう?」


『え?壱くん、場所知ってるの??』


「うん。兄貴が一人いるからね。この学校のことには詳しいつもり。行こ!」


そう言って、あたしの手を引っ張り、体育館へ連れて行ってくれた。



一それが、壱くん。
 
 
< 34 / 183 >

この作品をシェア

pagetop