生徒会長様の憂鬱
俺の声で一斉に視線が集まる。
当の本人――フランダース女もこちらを目を丸くして見ていた。
フランダースの犬でボロボロ泣くような弱そうな女が、この学校のNo.1だと?
確かに動きは素早いし、現に馨にも勝利しているわけだからある程度の実力は間違いない。
しかし。
しかしだ。
あんなどこから見ても普通の、それも涙もろい弱そうな女子がこの学校の一番だなんて、信じられないを通り越して許せなかった。
女だからみんな本気を出せないんじゃないか、顔面殴りにいくにも無意識に手加減しているんじゃないか、そんな考えが俺の頭の中をグルグル回る。
「あー、転校生か。なにやってんだお前。つかなに、フランダース女って」
古典的な思い出し方で、拳を手のひらで軽くポンと叩いたフランダース女は俺を怪訝な表情で見上げていた。
「そりゃお前がフランダースの犬見て泣い」
「わわわわわ!うるせー妙な事言うんじゃねー!」
凄まじい勢いで走ってきたフランダース女は開きかけた俺の口を塞いで慌てた様子で大声を上げると、小さな声で、泣いてねーよボケっと呟いた。
いや、泣いてたし。
俺の口を塞ぐ両手も、細くて小さい女の子の手。
特別美人ではないが可愛らしい女だ。
しかし、たかが女一人に。
「よースズカさん」
俺の居る学校が支配されているかと思うと胸くそ悪いわけで。
「これから俺と手合わせしねーか?」
予定変更。
誰もが深層心理では手加減してしまうであろう、女と言う存在。
そうやってこの学校の頂点に立つこの女を潰してやる。
「あぁ、いいよ」
一人相手にした後だと言うのにケロッとした顔で答えた彼女に腹立たしく思いながらも、また活気立ちはじめたリングの中心に俺達は対峙したのである。