生徒会長様の憂鬱
「俺、女だからって手加減しないから」
「別にいいよ」
耳が鳴るような強い風が吹く。
何度見ても細い体。可愛い顔。細い足。
正真正銘の女。
悪いけど全力で行くぜ。
充分な間合いから一気に近付いて、顔面向かって拳を投げる。
風を切ったそれは女の耳を掠めて宙を舞った。
先ほどの馨の二の舞になる気はない、同じ様に俺の手首を掴もうとした小さな手を空いた左手で掴みにかかると、それに気付いたのか女は柔らかい体をしならせて後ろに飛ぶ。
「早いね」
「まぁ、俺だって一端の不良だからな」
女は嬉しそうに頬を緩めて肩を回した。
「じゃあ本気でいく」
「は?」
こいつなめてんのか。
確かに今の動きは、馨と対峙したときより遥かに早かった。
それでも本気を出していないかのような発言。
流石にカチンとくる。
「じゃあその本気とやらを見せてくれよ」
その言葉がハッタリかどうか見極めてやる。
神経を集中させ、女の動き一つ一つを目で追った。
首をゆっくり左右に振り、足首を軽く回して数回ジャンプ。
軽く息を吸い、それからゆっくり吐き出す。
くる…!
そう思った瞬間には、女の一発を既に受けた後だった。
思っていたより数倍重い拳によろめきながらも、次々と繰り出される一方的な攻撃をすんでのところで避けながら相手の様子を窺う。
全く息はあがってない。
辛うじて避けているが反撃の余裕はない。
その瞬間、額に重い衝撃を感じて数秒間意識が飛んだ。
チカチカと星が舞う中、視界の隅に突如現れた女の足を確認して必死の思いで屈む。
頭突きからのハイキックだ。
アブねぇ…
「…!!」
思い切り振り上げた足の目の前で屈んだものだから、意識がハッキリした瞬間に視界いっぱい広がったのは、スカートの中。
「白…ガファッ!」
パンツの色を確認した瞬間後頭部にとんでもない激痛が走り、俺はそのまま意識を失った。