生徒会長様の憂鬱

結構その妄想で午前中を費やした。



4時限目終了のチャイムと同時に鳴った己の腹の虫で、私はようやく我に返り教科書を机の中に仕舞う。


教科書、あんまり使ってないのに教科書代も返さなきゃいけないのかな…、新品同様。


我に返ったというよりは夢を見ていた。


水責めか火あぶりかコンクリートづめでどれかを選ぶという究極の選択をシミュレーションし、結論・まだ死にたくない、に辿り着いたわけで。


そうだ、そうやって闇の世界に葬られるかもしれないから、右京と(不本意だが)葵と、久遠寺くんにお詫びと落とし前を…じゃなかったお礼をしなければ。



「あれー、リンどこ行くの?購買?」



「屋上」



不思議そうに背伸びをするハルを尻目に、私は教室を出て俄かに騒がしい廊下へと出た。

多分、歩く18禁グループはそこで昼食を取っているはずだ。


葵と2人っきりになったらそれこそ海に落とされかねないので、右京が一緒に居るときの方がいい。

ゆっくりと階段を昇っていると、同じルートを行くのか下から足音が近付いてくる。

まるで追いかけられているようだ。
どんどん早まる音に、思わずペースを合わせてしまう。



――…なんとなく、怖い!




私がペースを上げたことに気付いたのか、足音が小さく舌打ちを鳴らした。

あれ、なんか聞き覚えのある舌打ち!


息も吐かぬ攻防戦の末、4階から屋上へ続く踊場で物を投げつけられるような衝撃を肩に感じた。

こいつ!人の肩を握りつぶす気だ!



「おいてめぇ」



「ひっ!」



声色からして怒ってらっしゃる!




「なに逃げてんだよ」





振り返ると不機嫌そうな声が降ってきた。
少し眉間にシワを寄せて見下ろしている。
なんかこの人、いっつも怒ってない?



「そ、そりゃ後ろから誰かが来たら逃げるっしょ」



尤もらしい事を言ってやると、言い返す事が出来なかったらしく悔しそうに顔を歪め、誤魔化すように私の前に立った。
どうやら目的地は一緒らしい。

「屋上に用でもあんの?」




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