生徒会長様の憂鬱
「ったく、お前いい加減にしろ」
階段を降り人通りのある廊下まで一言も話さなかった要冬真が突然振り返り腕を組んで私を睨みおろした。
いや、いい加減にするのはあいつら(18禁)だから。
何だろ、私あいつらの保護者扱い?
何故代表して怒られなきゃいけないの?
「んなこと言ったって、あいつらに直接言ってよ私管轄外だから」
私はここ最近で最も正論らしい正論を述べたつもりだったのだが、向かいで不機嫌そうに見下ろす彼の口元から出たのは同意や謝罪ではなく、今まで聞いたことのないような深い深い溜め息だった。
しかも、呆れてモノも言えないというような表情付き。
「もういい」
えー!自己解決されちゃったよどうすんだこの憤り。
反論しようと口を開いた所で、タイミングを見計らっていたかのように要冬真は数歩進み私を振り返る。
呆れた表情のまま、口角を少しだけ上げた。
「行くぞ」
「…、どこに?」
「秋斗の所にも行くつもりなんだろ?」
何故か彼には全てお見通しらしい。
ゆっくり歩き出したその大きな背中を追いかけるように足を踏み出すと要冬真が一瞬振り返ったのが分かった。
先程と違って人がチラホラ通る廊下だからか手を繋ごうとはしてくれない。
手、繋いでくれないのか…。
!!
乙女な私消えろ!
恥ずかしい!
最近出現するようになった新しい自分(乙女ver)を底に押し込めつつ、足を早めて要冬真の隣へ並ぶ。
盗み見見るように彼を見上げると、長い睫毛が目に入った。
どうやら、付き合ってくれるらしい。
本当は少し怖かった。
だって何の断りもなしに消えてしまったのは私で、残された久遠寺くんは責任を負わなければいけなかったのだから。
私は縁が切れたっていい、しかし彼はこれからも背負っていかなければならないモノがある。
会わなければいけないが、会って何と言えばいいのだろう。
逃げて“ごめんなさい”
チャンスをくれて“ありがとう”