生徒会長様の憂鬱
「そういえば、鈴夏さんは冬真様と付き合ってらっしゃるんですよね」




昼休み、昼食をとりながら「醤油取って」からのスマートな流れで彩賀さんが、周囲を気遣うような小さめの声で耳を疑うような発言をしたので、思わず口に含んだお茶を勢い良く吹き出してしまった。

瞬間的に彩賀さんには吹っかけてはまずいと思って顔を背けた結果、隣の席で寝ているハルの跳ねた髪の先に、緑茶が数滴降り掛かった。




それに差し込む太陽が綺麗だとか思ってはいけない。

あれには私の唾液も混ざっているのだ。






アーメン。






「付き合っていないんですか？」


「ないない！なんで！？付き合うってなに？ニドランのメスとオスが？」


「交際、ということです」



私の苦し紛れのボケをスルーして、彩賀さんはあくまで真剣に答える。
わかってる、わかっているよ。

付き合う　＝　交際

と言う事位は。





「交際なんてしてないよ」





冷静に言い直すと、なんか気持ち悪い。

噴射して床に広がる水たまり、ではなく茶だまりを見ながらバッグに入っていたポケットティッシュを取り出すと、彩賀さんは嬉しそうにわらった。



「そうですか。では私にもまだ希望があるわけですね」



「いや！そういう事じゃないと思うけど！あれ？聞いてる？」


ポケットティッシュの裏に挟んであるテレクラの広告に顔を顰めつつも床についたお茶の上に数枚ティッシュを落としながら、全く話を聞いていない彼女を覗いて気付かれない様にため息をつく。





っていうか。
付き合ってないなら、なんなんだろう。





私は、あいつに好きだと言って。
あいつも私に好きだと言った。




多分。
夢じゃなければ。





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