生徒会長様の憂鬱
彼の表情が眩しくて、恥ずかしくなり目を逸らすと鼻で笑う声が聞こえる。
「お前バカだな」
猫が喉を鳴らすように笑った要冬真は、背もたれに肘をついて長い指をゆっくり伸ばした。
その先にあるのが私だと気付いた時にはすでに遅く、暖かい人差し指が伸びかけの前髪に触れる。
額に沿う様に流れた指先の感触に、息が詰まった。
盗み見た穏やかな表情に、余計心が震える。
面白い位に、私は彼にしか反応しない。
これが、“好き”なんだろうか。
具体的な何かがあるわけでもない、確証じみたモノを掴んでいるわけでもない。
ただ漠然とした感情全てが。
それを説明しろと言われたってきっと説明出来ないけれど、私は間違いなく要冬真が“好き”だった。
「ねぇ」
ポツリと発した言葉に、彼の指先がしなやかに停止してゆっくり離れていく。
「なんだ」
「私達って…つき、」
――…付き合ってるの?
つき!?
つきってなんだ!
私は一体何を聞こうとしてたんですか!
「つき?」
要冬真の冷静な声に心臓が跳ね上がりソファーから勢い良く立ち上がった私は、どうにか誤魔化そうと必死に頭を回転させる。
つき、いや絶対聞けない!
付き合ってんの?
なんて聞けない!
恥ずかしい無理!
「つつつつ、つき…」
「?」
突然立ち上がってどもり出した私を不思議そうな視線が追い込む。
どうしよう、とりあえず何か言わないと!
「つ!」
頭を過ぎったフレーズを審議する間もなく、ご丁寧にも生徒会室中に響く大声で叫んでいた。
「月に代わってお仕置きよ!」
ご丁寧にポーズまでつけて。
「…、は?」