生徒会長様の憂鬱
「しくしくしくしくしく」
「泣かないでー!大丈夫!リンのボケは最高だったよ!ただとうまがセーラームーンを知らなかっただけで…」
「そう言う事じゃないわボケ!」
勢い良くソファーから立ち上がりハルを睨み付ければ、彼は怯む様子もなく笑ったまま私の腕を引っ張り無理やり座り直させる。
「びっくりしたよー、とつぜん現れるんだもん!」
『なんでもありまっせーん!』
気まずい空気に絶えられなくなった私は逃走した。
生徒会室の窓から。
窓を強引に開けて上履きのまま地面に着地、それから全速力で走りだした。
逃げたい!この現実から!
月に代わってお仕置きよってなんだマジで!
偉そうに私は一体何なんだ!
中庭に面した花壇でしゃがみこみ何やら作業をしていた人間に躓いたので、両手を付き一回転して着地すると、後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。
『あれー忍者ごっこ?』
私が躓いたのはハルだった。
親しい人物の登場とむせかえるような羞恥心に、気付けば彼に助けを求めていた。
『た、助けて!』
「つうか、ここどこ?」
「えんげー部の部室でしたー!」
じゃじゃーん!
と効果音が出そうな手振りでハルは両手を上げた。
八畳程度の部屋には、沢山の本が並んでいて隅に重ねられたプランターは土が所々にこびり付いている。
ジョーロやシャベルが中に放り込まれていた。
「はぁ…、意外に広いね…」
それでもクーラーはしっかり設置してあり、生徒会室ほどではないが机と椅子それからこのソファー。
「でしょー?きっとみんなまだ来ないからゆっくりしていきなよー」
ハルは膝を閉じて、両手で太ももを叩きながら私を覗き込んだ。
「いや、いいや帰らないとあいつに怒られるし」
「いいからいいから!」
「ギャィ!」
帰ろうとした肩をガッツリ掴まれて、私は勢い良くソファーに転がった。
そこはハルの膝の上。
土の匂いが鼻を掠める。