生徒会長様の憂鬱
やんややんやと噛みつく雛菊くんと、流れるように言葉をかわすナルくん。
完全に置いていかれた私が何となくハルを見ると、彼は楽しそうにその様子を眺めていた。
あれ、私どうすればいいの?
「とにかくだ、鈴夏ちゃん」
うわ!
ビックリした!
ついさっきまで言い合いをしていたのに、ナルくんは向き直り艶のある笑顔で私の手に大きな手のひらを重ねて、語りかけるように口を開いた。
「人を好きになることは恥ずかしいことかい?」
「お前は少し恥ずかしがるべきだろ」
雛菊くんの野次を完全に無視して私の手を持ち上げて柔らかく包み込み、優しげに目を細める。
「少し気後れするのは解るけど、確かめたら君はきっと花のように笑える。頑張って」
「そうだな、ウジウジしてたって仕方ねーだろ?ガツンとぶつかってこいよ」
「そーだよリン!それだけが取り柄じゃん!」
「ゴルァ!ハル!聞き捨てならんぞ!」
最後のハルの言葉にかちんと来たがとりあえず。
キャラクターの濃すぎる園芸部を後にして、私は上履きのまま昇降口に向かっていた。
ウジウジ…、か。
恋スル乙女特有のこの感じ。
最近読み出した少女漫画は、こんな感じで有耶無耶にしてたら状況悪化して大事件になってたな。
やっぱり。
聞くしか無い!
「私たちって付き合ってるの!?」
前庭のションベン小僧で練習。
ただ、噴水分のサークルで若干距離があるためなんだか悲しい気がするが。
もう一回!!
「私たちって付き合ってるの!?」
「あんた何してんの?」
「うぁぁぁぁ!すいません!ションベン小僧だとは思わなくて!」
背後から間髪入れずに冷静なツッコミが入り、わき上がる羞恥心で意味不明な事を口走って振り返ると、そこに立っていたのは撫子だった。
クールビューティー撫子。
凍てつくような視線に威圧感のある口調。
「ションベン小僧じゃない」
はい、その通りです。