生徒会長様の憂鬱
撫子は訝しげな表情で私を見た後、黒い髪をかきあげた。
「上靴で歩くなんて汚いわね」
ツンケンした口調は前からだが、当初の嫌われ具合からすれば優しくなった方である。
今思うとロミオとジュリエットの時期が懐かしい。
頭から水をかぶったのは正直初めてだったし、それが言われのない噂のせいだったから人生における事件トップ10に入る。
まぁ一位は永久欠番で要冬真を好きになったことだけ、
「どー!?」
「!!なによ!ビックリするじゃない」
何となくの思考から重大な事を思い出して叫ばずにはいられなかった。
いやだって…。
今目の前に居る撫子だってそうだし、よく考えれば彩賀さんだってそれに学校中広がる要冬真の組織。
いくらなんでも今更また女子の敵にはなりたくない。
いや、でも…!
「ぐぁぁぁあ…」
「突然唸りだして何なの。悩みでもあるわけ?」
きつめの口調で私を気にかける彼女は明らかに世で言う“ツンデレ”ってやつだ。
「いぁ…あの、その」
どうしよう。
素直に聞いてみるべきなのか?
「要様の事でしょうどうせ」
「ゲホッ!なんでそうなるの!」
図星ですが。
「だってアナタの要様に向けられる目が変わったもの」
「え!」
そんなに分かりやすい!?
私目から何が出てるの?loveビームでも?
いや、キモイ!気持ち悪すぎる!
私が益々悶えると、撫子は呆れたように溜め息をついた。
それから腕を組んで噴水の縁に腰を降ろす。
「落ち着きなさいよ。で、アナタどうするの?」
「…、へ?」
「それを要様に伝えるの?」
「ふえ?」
実はもう伝えてます。
とも言えず私は固まった。
てっきり罵倒されると思っていたから。
まさか告白という選択肢を初めに提示されるなんて。
「なによその顔。一応定められた掟では“想いを告げるのは自由”ってなってるんだから、そんなの自由じゃない」
掟?
「…、ほう」