生徒会長様の憂鬱
ん?
“要冬真様に関する事項”
やべ忘れてた。
「そんな絶望的な顔しても、私は告白に立ち会わないわよ」
すがるような目をしていたらしい私からプイッと顔を逸らした撫子は、腕を組み直して足を組んだ。
ていうか立ち会うって何。
“1、私用で話しかける場合、必ず数人で、そして人の多い所で話すこと
2、好きになるのも告白するのも自由。ただし要様が選んだ女子に文句は言わないこと
3、無闇な抜け駆け禁止
4、仕事の邪魔になるような歓声はNG”
NO!
この掟、私殆ど無視してた!
「ぐぅ…」
ぐぅの音は出た。
まぁ今更破り続けた掟を守るのも妙な気がするが、今と昔では訳が違う。
この掟を守る全ての女の子が、要冬真と言う男に惹かれているのだ。
何となく、フェアーじゃない。
「まぁ、告白せずに、組織に入るのも手だけど?」
アナタなら討伐隊にピッタリかもね、野蛮だし。
と、彼女はトゲのある言い方で付け加えた。
「告白しないと、組織に入れるの」
素朴な疑問だった。
彩賀さんもそうだし彼女だって、好きならもっとアピールすればいいのにそんなの見たことは一度もない。
まぁ均衡を保っている状況でそんな事できる人間は強靭な精神の持ち主だろうが、彼女達――つまり組織に何らかの形で所属する人間は、要冬真に対して黄色い声を上げたり熱視線を送っているのを見たことがなかった。
「まぁ、私達は、ある意味“諦めた”人間だから」
「どういうこと?」
「高嶺の花って事。要様との階級の違いや釣り合わない事に気付いた人達ね。少し考えれば分かる事よ、芸能人や死んだヒトを好きになるような感じかしら」
私。
「組織に居るヒトはそんなヒトばかりね」
ラ ー メ ン 屋 で す が ?
「はぁ」
そんな事、考えたこともなかった。
そりゃあ一度は諦める覚悟を決めたけれども。
階級の違いとか、それこそ私と彼は違いすぎるのに。