生徒会長様の憂鬱



「怖じ気づいた?」



撫子は鼻で笑ってから、透明に光る噴水に人差し指を滑らせた。



「お、怖じ気づいてなんか…!」



つい反射で言い返すと、彼女は楽しそうに肩をすくめた。




「でしょうね、だからアナタは告白するべきよ」




撫子の言葉の真意を図りかねて首を傾げると、彼女は組んでいた足を地面に下ろして立ち上がり私に歩み寄った。



「だってアナタ真っ直ぐだもの」




「いだっ!」



おでこを手のひらで叩かれて声を上げると、一緒だけ優しげに微笑んですぐに眉を釣り上げる。



「ただし、告白するなら1対1はダメよ。昔は口から出任せ言った人が何人も居たわ、だから堂々と沢山の人が居る前で想いをつげること。玉砕か成就かは解らないけれど、それが彼を好きになるってことなの、いいわね!?」




腰に手を当てまくし立てるように叩きつけると、彼女は長い足をいつもより大股に広げ部活棟の方へ消えていった。




「…行っちゃった」


突然現れて優しくされたと思ったが最後はキレ気味に去っていく怒り気味の背中を見送って、私は踵を返した。



確かめる前に、大事な事がある。
この学校で要冬真に出会って悔しい事に好きになってしまったのだから。


あいつの為に守られてきた決まりを、私が破るわけにはいかない。




だったら今すぐに!
ちょっと勢いづいた今のうちに!


私はあいつに告白してやるわ!!






「はーっはっは!見てろよ目にモノみせてくれるわぁぁぁあ!」





全速力で前庭を駆け抜け、昇降口に入っていった。



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