生徒会長様の憂鬱




「失礼します!放送部ですけど放送室に忘れ物したんで鍵貸してください!」



「あれ?仁東いつから放送部なんかに入ったんだ?」


「たった今です!」



職員室に突撃して半ば強引に鍵を受け取り、放送室へ走った。
生徒会室の隣の隣が職員室で、さらにその隣の隣の隣の隣が私の決戦の舞台だ。




無理やり差し込んだ鍵穴が悲鳴を上げたが無視。
防音室に入りキャスターのついた椅子へ飛び込むように座りマイクを握りしめた。
スイッチを入れ、ライトが点灯したのを確かめてから思い切り息を吸い込む。



覚悟を決めるのよ私!



アナウンス前に流れる音楽がどれを押せば出るのかが判らなかったので、自分で言うことにした。




「ピーンポーパーンポーン!」



これは校舎ばかりではなく、運動場に面したスピーカー、部室棟、技術棟、とにかく全敷地内に流れているだろう。


端から聞けばかなり間抜けだろうことは明らかだが、もう恥は捨てる事にした。




「えー、学校敷地内に居る皆さんにお知らせいたします!」





“人を好きになることは恥ずかしい事かい?”





恥ずかしくない!
どんなに悔しくても、想定外でも。




「わたくし仁東鈴夏は、生徒会長・要冬真の事が好きであります!!以上!」




マイクに叩きつけた言葉を強引に押し込める。




言った!
言ったわ私よくやったわ私!
自分で自分を誉めてやりたい!




満足してスイッチを切ろうと手をかけた所で防音室の扉が、重さを失ったかのように勢い良く開かれた。



「お前、こんなとこでなにしてんだよ!!」


「ギャー!」


驚いて叫び声を上げると素早くこちらに近寄ってきて脳天に痛みが走った。


肩で息をしている要冬真の、眉間にはシッカリシワが寄っている。



ああああ!
怒ってる!一寸の狂いもなく私に向けられている!
マイク通しての辱めは御法度でございましたかゴメンナサイィィ!



「ったく、勝手に窓から逃げ出しやがって!探したじゃねーか」



あれ?
怒ってるのそっち?
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