生徒会長様の憂鬱
「あのー…その」



「なんだよ」




静まり返った室内に、戸惑い気味の私の声とそれを静かに聞く優しい空気が流れていた。



「…、海ちゃんの事好きなの?」



「はぁ?」




一瞬空気が固まった!
がチッって言った!
こわぁぁぁぁ!




一本だった眉間のシワは一気に三本になり、元々にしてきつめの目元に殺気を付け加えたビームが飛んで来た。

ソファーの影に隠れてその攻撃を避け数秒のインターバルの後もう一度ソファーの背もたれから顔を覗かせると、生徒会長用椅子は殻。





――…いない!





「アホかこっちだ」



「ヒィィ!」




不機嫌な声が気絶しそうな勢いで振り下ろされ心臓が飛び跳ねた。

振り返る前に気配が消え、ソファーが横に沈む。



何となく察した説教モードに、ソファーの背もたれに向かい合っていた体を180度回転させ改めて座り直した。
ソファーについていた膝は、行儀良く揃えられている。

私健気!





「お前は誰のモンだ」



「私のモノで、っ痛い!」



「誰のもんだ?あ?」




顎をガッツリ片手で掴まれて無理やり首が曲げられた。
至近距離で合った目は楽しそうに細められる。

眉間のシワはすっかり無くなっていたが、明らかにおちょくる体制だ。




「私のモノ!」



「俺のもんだバカ、1ヶ月前にも言っただろ」



「肯定した覚えはない!」



「お前に拒否権はない」




なぜ!!




「大体、俺はお前が好きなのになんで海を好きなんだよ」




呆れたようにまた眉を顰めた要冬真は、顎を下から掴んだまま頬を潰すように力を入れた。


「いひゃい」



「俺様に理解出来るように説明してみろ、え?」




ニヤリと、口の端を上げ私を静かに見据えた。


返答次第では…殺られる!




とりあえず何か言わなければと口を開いた瞬間。



「戻りました」



扉の前に無表情のユキ君が立っていた。
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