生徒会長様の憂鬱
とは言っても気になるもんは気になるわけで。
私は中庭の入り口で、すっかり葉が落ちた桜の木の下で座り込みじっと花壇を睨みつけている海ちゃんを発見した。
ゆっくり近付いて声をかけると彼女はそのままの表情で私を見上げ、また逸らしてから。
「かえらないもん」
と呟いた。
正直私も海ちゃんに対しては反抗的な態度は取られたことがなかったので多少怯んだが、何とか踏みとどまって隣にしゃがみこんだ。
「どうしたの?なんかあったの?」
未だ花壇を睨み付けたままの彼女を覗き込むと、その瞳に滲んでいるのは大粒の涙。
うげ!
私か!?私のせいか?
オロオロと体を動かす気持ち悪い私を一瞬だけチラリとみた海ちゃんは、手の甲でぐしぐしと目元を乱暴に擦る。
「慧が――…」
「え?」
確かに聞こえた彼の名前。
その消え入るような声に我に返ると、海ちゃんは地面を蹴り飛ばすように立ち上がる。
「慧が…、悪いの!!」
「え!あっちょっと!」
中庭中に響いた声と共に勢い良く走り出した海ちゃんは、あっと言う間に私の前から消えさらに視界から居なくなってしまった。
「えっ…、ちょっと…。…え?」
「おどろいたねー」
追いかけようか躊躇して彼女に伸ばしたまま行き場を失った手をヒラヒラさせていると、どこからともなく声が聞こえてくる。
「まぁ驚いたというか、あんな海ちゃん初めて見たというか…誰!?」
普通に会話したけど。誰!
勢い良く声のする方へ振り返ると土まみれのハルが立っていた。
「なんだハルか」
そう言えばここは園芸部のテリトリーだった。
「ゆうちゃん、どーしたの?」
シャベル片手に首を傾げるハルは花壇を飛び越え私の隣に並んだ。