生徒会長様の憂鬱

要冬真の言いたい事が分からなくて首を傾げると、トマトに触れていた手がソッと離れた。



「あいつ、女友達いないからお前が来たのが嬉しかったんだと思う」



不意に向けられた笑みに、私は固まり彼を無言で見下ろした。

漆黒の髪が揺れて長めの前髪から覗く目元が優しげだ。
不整脈と一緒にジワジワと体を駆け巡る罪悪感。


彼女の気持ちも知らず少しだけ暗い気持ちになってみたり、それでもまだ要冬真の笑顔の意味を深読みして心が震えたりでもその表情にときめいてみたり。


もう何だかグチャグチャだ。



「お前のバカ正直が移ったのかもな」




「ぎゃっ!」


トマトから離れていた手は行き場をなくしたと思えばこちらに伸びていて私の頭に乗せられた。


「あいつに女友達が居ないのは俺のせいだからな、なんとかしようとガミガミ言ってきたが結局あいつを変えたのはあいつ自身だった」



彼の視線の先にはニンジンを食べさせようとするユキ君と全力で拒否する海ちゃん。

何だかんだで楽しそうだ。




「知らないうちに成長してたんだな」



その横顔は少しだけ寂しそうに見えた。
昔聞いた、二人の過去。

人一倍責任感の強い彼は自分のせいで独りになってしまった小さな幼なじみを救いたかったのだろうか。



だから――…



「人一倍気にかけてたのは、幸せになってほしいから?」



「そんな大袈裟なもんじゃねぇよ。あいつが不器用だったから、バカなことしないように見張ってたんだ」




…こいつも素直じゃないな。


「お前今、俺が素直じゃないって思っただろ」


「え!エスパー!?びっくり人間showすぎる」

「アホか顔に丸出しなんだよ、ホントバカ正直だな」


私の頭に乗せられた手が乱暴に髪を乱していく。


「ギャーなにすんのよ!つかなんで頭に手乗せっぱなし!?」


「触りたかったから」



「!!」



「顔真っ赤だぞ」



「だ、誰のせいだと…!」


「素直になってみたんだが?」


こいつ!!







fin
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