生徒会長様の憂鬱
日は変わり冬の下校。
マフラーに手袋、普段ならさっさと帰ってコタツに潜るというダメっぷりを発揮するところだが、今日は違った。
住宅街から離れた駅前。
この時間であることを手伝ってせわしなく人が行き来している。
メモ用紙に書かれた簡単な地図と店の名前。
カフェレストラン“シャルル”
擬音じみた店名が気になったが着いてみれば、なんてことないコジャレたカフェだった。
店内が見える大きなウィンドウを覗く。
ほぼ満席の客は殆ど女性のようだ。
まぁ、確かに女性向きかなとは思うけど…。そんなにめかし込む必要がどこに?
しかし私は今そんなことどうでも良かった。
ここに来たのは、店を見にきたわけでも客を見にきたわけでもない。
ウィンドウに張り付いて中を覗いていると、数名の客がそれに気付き不審な眼差しを向ける。
はっ!
そんな冷たい目線で蔑もうとこっちは慣れっこだよ!
私を見ていた彼女達は、厨房らしき扉から出て来た人影に気付きキャッキャと騒ぎ始めた。
なんだ、人気店員でもいるのか?
釣られるように視線の先を追うと、シルバートレイを持ったウエイターがこちらにやってくるのが見えた。
青みがかった髪。
白い肌に、ツリ気味の大きな目。
人形を具現化したような等身に小さな顔。
高く結ばれていた髪は短く切られ、耳にかかる程度しかない。
が、あれは間違いない!
「ああああああ!」
いや!
居ることは知ってたけど!つうかアナタを探しにわざわざ鈴臣さんに店の場所聞いて来たんですけど!
ジワッと目が滲んでいく。
私のせいじゃんなにこれ、一流執事がこんな小さな喫茶店で何してんの!
「み、みじゅきさん…」
私はコンクリートに崩れ落ちた。
『深月か、深月はね執事をやめて駅前のカフェでバイトしてるよ』
「うぉーん!涙で明日が見えない!」
「なにしてるんですか鈴夏さん」
「ぎゃー!!すいません!腎臓売って深月さんを養いますぅぅぅ!」