生徒会長様の憂鬱




久遠寺くんが何食わぬ顔で店内に入ったお陰で私は酷く肩身の狭い思いで席に着いた。




“さっき外で中を見てた人だ”


みたいな視線をバシバシ感じる。
タイミングよく深月さんはキッチンに入っていったようで、頭を低くして辺りを見回しても姿は見られない。



「怪しいですよ」


「うるさい」


周りから好奇の目で見られることで深月さんに会わなくて済むなら当然選ぶのは…



前者!!



自分から様子を見に来ておいてその態度はなんだと思うだろうが、こっちは心の準備が全く出来ていない。


とりあえずロトの剣を手に入れてから深月戦に臨みたかった。


ぶき や ぼうぐ は そうびしなければ いみがないぞ!



そんな声が頭に響く。


装備か…せめて久遠寺くんを装備とかしたいよ…。



向かいに座っている久遠寺くんにメニューを手渡され何となく開くと美味しそうなケーキがズラリと並んでいる。



ショートケーキがいいなぁ…。


前をめくると、オムライスやスパゲティなどもあるようだ。



視界の隅に気配を感じて顔を上げると、ちょうど奥からボス(深月さん)がトレイにティーカップを乗せて出てくる所だった。



すずか は メニュー を そうびした!




とっさに顔の目の前へメニュー表を掲げ、上から目だけを出して彼の姿を追う。



「決まりましたか?」



久遠寺くんが先ほど出された水を飲みながら不審な私に構うことなく声をかけた。



「ショートケーキ」



「すいません、注文いいですか?」




イヤァァァァァ!
ちょうど奥の客に飲み物を出して引き返した深月さんに、久遠寺くんはあろう事か声をかけた。


「まままままって…!やっぱショートケーキなし!違うのにするから注文…」



「ご注文をどうぞ」




紙の伝票を持ちこちらへやってきた深月さんは、変わらぬ無表情のまま顔をあげたのでとっさに額をテーブルに打ち付けた。



< 65 / 107 >

この作品をシェア

pagetop