生徒会長様の憂鬱



「呼びつけておいてに私たちがいちゃついてたから怒ったんじゃないですかね?」



久遠寺くんはテーブルに半ば放り出された形で置かれたメニューをスタンドに戻して整った姿勢のまま爽やかに笑って見せた。


「いちゃ…!?いちゃついてた?」


「私はいちゃついたつもりでしたが?」




紳士スマイル!!
何食わぬ顔で恥ずかしいことを言うな!



「いいいや!やっぱいちゃついてない!」


「そうですか、それは残念です」


全く残念じゃなさそうに久遠寺くんは笑い、改めて店内を見回す。
それにつられて視線を彼から外すと、周囲からかなり注目されていることに気がついた。



「見られてますね」



まぁ、人気ウェイターなんだろうけど。
人気ウェイターが私みたいな一般人(しかも店内を覗く不審者)を“様”と呼んだのだ。

どんな関係か気になるのは当然だろう。



「人気ウェイターなんですね、あの方は」


いやしかし!


アナタも充分目立ってますよ!深月さんがホールに現れた時と変わらぬ熱視線。



このミーハーどもが!



最近気付いたのだが、久遠寺くんはあまり自分の容姿に興味がない。


周りから注目されるのは慣れっこのようで女の子が遠目からキャッキャしてても我関せずと言う感じ。



『当然だろ、俺の容姿で放っておかない女がいると思うか?』



うわ!あいつ(要冬真)の自意識過剰っぷりったらないな。
数ヶ月前のヤツを思い出してイラっとしつつ、私は汗をかいたコップに口をつけた。


でも。



やっぱりあの感じは怒ってたよな。
冷たい表情に掠める程度の怒り、一瞬だから見逃してしまいがちだが深月さん相手だから尚更注意深く観察していなければ分からない。


私が勝手に逃げてしまって部屋の入り口で見張っていたわけだから当然、なんらかの責任は取らされたはず。


執事であることに誇りを持っているであろう彼が、こんな所にいるのは。


やっぱり私のせいなのかもしれない。




そんな私が突然現れたら…。





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