生徒会長様の憂鬱
「腹立つよなぁ…普通は」
せめて謝りたい。
もしかしたら許してもらえないかもしれないけれど、また前みたいに話が出来たらと思う。
彼が望むのなら升条家に乗り込んでもイイ。
とにかく、せっかく来ただから深月さんとちゃんと話がしたかった。
「?なんですか?」
「いあ、なんでもない。そう言えば久遠寺くんこの道通学路なの?」
「えぇ、通学路というか駅を利用するんですよ」
「へぇ、知らなかった」
人の家なんか気にしたこともなかった。
でも彼もかなりの金持ち。きっと家は信じられないくらい大きいんだろうな。
要邸しかり升条家しかり。
「なんですか妙な顔して」
「あー、家おっきいんだろうなって思ってさ」
私が譫言のように言うと、久遠寺くんは両手をテーブルの上に軽く乗せ軽く手を組んだ。
「じゃあこの後行きますか?」
「?どこに?」
「そりゃあ、私の」
「お待たせしました。ショートケーキでございます」
久遠寺くんの言葉を遮るように上から降ってきた声と共に小さな皿がテーブルの上に置かれる。
繊細な指先さえも懐かしい。
綺麗だった爪先はこの店で働いているせいか少しだけ、荒れていた。
さっさとコーヒーとアイスティを並べ、トレイを脇に抱えた深月さんを見上げるとその表情は明らかに不機嫌そうだ。
「久遠寺様、今はアナタの婚約者ではないのですから。そういった誘いはよくないのではないのですか?」
「それはそうなんですけどね、私がどう彼女にアプローチしようとアナタには関係ないんじゃないんですか?」
「ちょっ…久遠寺くん何言って…」
「そうですね」
どうフォローしたらいいかも分からず曖昧な声を出すと、さらにそれを遮るように放たれた深月さんの言葉に息を吸い込んだ。
短い言葉はまるで突き放しているようにも思えて体の奥がジワリと滲む。
「確かに私には、もう関係ありません。出過ぎたことをしました。申し訳ありませんでした」