生徒会長様の憂鬱
体の奥がチクリと痛んだ。
協力してくれない彼に怒りをぶつけたりもした。
でも立場上どうすることも出来ないのは、馬鹿な私でも分かる。
子供じみたあの時の暴言が自分に跳ね返った。
“私の執事だろーが!”
執事である以前に、彼は大人だ。
私の為に上に刃向かうなんて出来るわけない。
――…だから辞表なんて
私の為に動けと言った私と、社会で従わなければいけない上司の言葉。
そんな間で揺れた深月さんがぁぁぁぁ!
「やっぱ私が悪いです!」
「ですから。悪くないです」
「いえ!店では私を近づけんとする怒りオーラが!正直に言ってください!正直に罵っていただけた方がいっそスッキリします!」
「あれは…!」
また自分で言って自分に跳ね返ってくるような自虐を吐いて傷ついた。
でも隠されて取り繕われても、虚しいだけだ。
すかさず放たれた深月さんの言葉に驚き彼をマジマジと見上げると、寒さのせいか少し頬が赤い。
目があった瞬間ばつが悪そうに逸らされた視線は明らかに何かを渋っている。
言うべきか、言わざるべきか、そんな表情だった。
「笑いませんか」
「へ?」
「今から下らない事を言いますが笑いませんか?」
戻された切れ長の大きな目はまだ、何か迷うように揺れていた。
こんなに表情がはっきりしている深月さん、初めて見た。
髪も切ってしまっているし、まるで別人だ。
「鈴夏様のお世話をしていたのは私で」
口元は落ち着いたように、無表情へ戻っていた。
再び絡んだ視線はいつもの彼で、時々思い出したように吐く溜め息で空気が白く濁る。
「久遠寺様が貴方に世話をやくのを見て、少しだけ――…」
――…悔しくて
「“関係ない”と言うのは分かっていたんですが、いざ認識すると――」
――…悲しくて
「それで妙な態度を。ですから決して鈴夏様を疎ましく思っているわけでは…」