生徒会長様の憂鬱
きっとすごく堅い顔をしていたんだと思う。
ゆっくりと私から手を遠ざけた彼は吹き出したように笑った。
「別に取って食いやしねぇよ」
子供っぽい楽しげな口調に人知れず安堵の息をつくと、無意識に固まっていた全身の筋肉が弛緩していくのがわかった。
別にそう、取って食べられるとかそういう事を考えていたわけではない。
ただ2人っきりだってだけで無駄に緊張する。
どうしたらいいか分からない。
だから…。
「お前、学校で俺の事避けてるだろ」
「え?」
げっ!
バレてる!
「そそそそんなことはなななないよ!」
「避けてるというか、二人だけになりたくないようだな」
私から視線を外して、ベッドから見える窓を遠い目で眺めながら涼しい顔をして要冬真は呟いた。
わぁぁぁあ!バレてる!丸々バレてる!
どうしよう!
理由が理由だけに言いたくない!
ベッドには、座ったまま目線を合わせようとしない要冬真と腹ばいで寝そべる私。
下からのアングルなのに、なんでこの人カッコいいわけ…ってそうじゃなくて!
なんか、傷付けた!?
何となく、誤魔化せない状況に私は思わず顔を上げた。
どうしよう、もしかして私が嫌で避けてるとか、そういう風に思ってる?
でもハッキリした理由を言うのは恥ずかしい。
だって一緒に居るだけでドキドキするなんて…小学生みたいじゃないのぉぉお!
顔を布団に沈めて拳でベッドを叩く。
「なにやってんだお前」
呆れた声に再び顔をあげると、ようやく私と目を合わせるように要冬真が視線を下ろした。
一度、何かしようと私の頭に伸びた彼の長い指が一瞬止まりそれから何事もなかったように膝元へ戻っていく。
憂いを帯びた表情だ。
「!!」
やっぱり!
言わなきゃダメなんじゃないか!?
そんな寂しい顔されると!なんか辛い!
私が悪いみたいだもの!なにこの頭の痛くなるような罪悪感!
「あああああの!」