生徒会長様の憂鬱
要冬真の腰辺りに狙いを定めたはいいものの、一体どうやって抱きつけばいいのか分からず体が動かなくなる。
あれ、抱きつくってなんだっけ?
あの腰元目掛けてタックルかませばOKかな?
あれ、改めて「やれ」とか言われると全然わからん。
ちょっと待って、どうしよう、とりあえずタックルでも…
「おい」
「あ、はい」
「獲物を狙うハイエナみたいだぞ」
そんな飢えてねーわ!
大体女を抱きなれてるお前と一緒にすんな。
タイミングとか、私が息を吸ったときにタックルするのか相手が息を吸ったときにタックルするのかとか、色々悩むことがあるんだよ!
「別に深く考えなくても、俺の目の前に来て体に手回せばいいんだよ」
「え?タックルじゃなくて?」
「お前は俺に技をかける気か」
呆れたようなため息が聞こえ、それから彼は「やってみろ」と冷静に呟いた。
あんたは受け身だからいいかもしれないよ!私は攻めだよ攻め!
意を決して、私は元々短かった距離をゼロにした。
あああ、深月さん相手じゃ全然平気なのになんでコイツだとダメなの、いや理由は痛いほど分かるんだが、悔しいから知らないフリだ。
目の前には彼のブレザーのネクタイ、鼻先に感じる甘い匂い、不意に聞こえる呼吸音。
全てが奴だと思うと酷く緊張する。
広い部屋の広いベッドで距離がゼロに近い二人。
端からみたら怪しすぎる。
しかし、やらねばなるまい!
最早これは私に課せられた課題!
必ず乗り切ってみせる。
了解を得ようとして目だけで要冬真を見上げると、無表情で私を一瞬見下ろしてから口元だけで、早くしろ、と呟いた。
鉛のように重い両手をなんとか広げ、ゆっくり彼の腰に回す。
思っていたより何倍も細いそれに、目測を誤った私の両手は引きずられるように強く巻き付いた。
暖かい体。
相変わらず煩い心臓を落ち着かせる為に息をゆっくら吐き出すと、背中に何かが巻きつき体が前へ引き寄せられる。