生徒会長様の憂鬱
早速始まった授業。
俺は今後のプランを立てるべく、プロジェクターで延々流れる“フランダースの犬”を右耳だけで聞きながらノートへ思い付くまま書き出した。
・仲間を見つける
・海賊団結成
・この学校の番長を見つける
・叩きのめす
・海賊王
「…」
昨日徹夜でワンピース全巻読み直したのが間違いだったぜ。
“海賊団結成”の文字の上に斜線を引いて改めて眺め直すと、しっくりくる。
ゆくゆくは海賊王か…悪くないな。
急に目が痛くなるような光が射し込んできて顔を上げると、先程までプロジェクターとカーテンから漏れる日光だけで保たれていた教室の暗闇がいつの間にか綺麗サッパリ逃げ出していた。
社会だかなんだかの教師が、紙を生徒達に配っている。
前から回ってきたそれにどうやら感想を書けということらしい。
…フランダースの犬ってどんな話だっけ。
俺は、何となく昔の記憶を捻り出しながら当たり障りのない感想を並べていった。
ご存知の通り、俺は頭がいい。
授業は(勘で)受けるタイプだ。
成績の良い不良には、よほどの事がないと教師は口出ししてこない。
俺はそのことをよーく理解していた。
成績面・不良面、全てにおいて天下をとってやろうと、そう言う考えなのだ。
やっぱ俺って頭イイ。
一通り感想を書き終えペンを置いた所で、右から鼻を乱暴に啜る音が聞こえて何となくそちらへ視線を投げる。
そしてギョッとした。
肩を少し超える程度の茶色い髪から覗く頬を伝うのは間違いなく。
げっ…、泣いてる…
視線を離せなくなった俺は、その隣の席で泣きながら感想を書き綴る女をまじまじと眺める羽目になり。
「なななな、泣いてないよ!」
その視線に気付いて慌てるように涙を拭った妙な女を見て、ああそう言えば女ってこんな感じだよなぁと再認識するのだった。