生徒会長様の憂鬱




“No.2の喧嘩は見ておいた方がいい”



ただ単にこの学校の一番を見ておいて損はない、そんな意味だと思っていた。

生徒の笑い声が段々遠くなり、野次や歓声が耳につくようになってくる。
俺より少し小さい純の後ろ姿を追いながら屋上への階段を登りきり、開け放たれたドアの奥の明るさに目を細めると、十数人の観客達の学ランが辛うじて確認できた。



「あ、もう始まってましたね」



純が慣れた様子でキョロキョロ辺りを見回して隅の空いているスペースへ俺を案内する。
何となくリング(つまり観客達によって作られた不自然に空いたスペース)を見ると、そこに髪をワックスでガチガチに固めてオールバックにしている男・馨と…。



「セーラー服?」




「だから、見ておいた方がいいって言ったんです。No.2は」




馨の左ストレートがセーラー服の顔面に繰り出される。
早い。



「女です」



しかし何事もなかったかのように避けた女の動きは流れるようだ。
その手を掴んだスカートが腹へぶつかり、馨はうなり声を上げた。




「うわぁ…今の膝蹴り痛そー…馨がんばれー多分負けるけどがんばれー」



隣で純は棒読みで応援している。
確かに今の様子だけでも二人の強さは違うのが分かる。



しかし女…。



中々やるじゃねーか、膝蹴りから見て力はあんまり強くないがスピードはある方だな。


逆光で顔は確認出来ないが恐らくすげーゴツイ顔してんだろう。
前住んでた俺の地区のレディースのヘッドめっちゃゴツかったもん。



なんかもうイワンコフみたいな。
オカマ王みたいな。


あ、誰それって思った奴はワンピース読めよ。
つまり、簡単に言えば男がスカートはいたみたいなヤツだったわけ。


強さと女性らしさは反比例するよね。



悲しきかな。




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