生徒会長様の憂鬱
なんとなくそんなことを考えながら二人の喧嘩の様子を眺めていると、純が思い出したようにこちらを振り返った。
「つうか、鈴夏さんとマサノリさん同じクラスじゃなかったでしたっけ」
「スズカさん?」
「あ、No.2っす」
「え、そうなの?」
教室では不良の雰囲気を醸し出した女子、それどころか男子さえも居なかった印象だ。
バカみたいに不良臭プンプンさせるやつはNo.1にはなれないって所か。
大体俺も転校生として過ごして一週間。
マトモに話したヤツなんて隣の席の涙腺緩い女だけだし、話してみないと分からない事だってあるから気付かないのは当たり前かもしれない。
教室の和やかな雰囲気を思い出しながら俺はため息をつく。
その瞬間聞こえた歓声と、重いモノが落ちる音で我に返り顔を上げると、ばっちり伸びている横たわった学ランが目に入った。
「馨頑張ったーエラいぞー」
字面だけみると馨を褒めていそうだが、純の言い方は感情が籠もっていない。
純は倒れた彼を回収するためか、立ち上がって番長の居る方へ向かっていった。
彼女は暫く黙って馨を眺めていたが、しゃがみ込んだと思うと彼の頬を軽く叩いて声をかけているようだ。
しゃがみ込んだ拍子に逆光で全く見えなかったその表情が俺の視界に飛び込んでくる。
肩まで伸びた茶色い髪に、大きな目、顎はスマートで俺が想像していたイワンコフとは似ても似つかない、普通の…
女だ。
細い首と華奢な肩、正真正銘どこにでもいる女。
しかもどこかで見たことがあるような。
――…なななな、泣いてないよ
「あ!」
俺は脳内で繋がった点と点に、周りが振り返るような声を上げた。
「フランダース女!!」