苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「ママは?」

「それが、急な用事でこれなくなったんだってー。
 急がしいんだね。
 大丈夫。ユリアの将来のことを話し合うんだろう?
 もっともそんなこと話し合わなくても決まってるのにね」

自信に満ち溢れた口調でそういうと、止める間もなく人の顎を持ち上げて、当然のように唇を重ねてくる。


ガラリ、と。
まるでタイミングを見計らったかのように教室の扉が開く。

学校には不似合いなディープなキスシーンを目の当たりにして、目を丸くしているのは、金子さん親子。
そして、担任の先生。

「早乙女さ……」

ほら、言葉を失って、ぱくぱくしてるじゃないっ。

私はキョウの厚い胸板を押して、ようやく唇を離した。
濡れた唇を、色気の余韻のかけらも無く手の甲で拭うと

「記憶を消してくれないと、絶交なんだからっ」

と、小学生のようなことをキョウに言う。
他に思いつかないんだもんっ!

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