苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
七夕の雨を見て泣いていた少女が、いまやこんなに大きくなって――。

おそらくは、今日が何の日かも忘れているのだろう。

「ねぇ、どうでもいいけどいまどきこんなトカレフなんて、何に使うのよ」

ありがとうございます、と、袋に手を伸ばしたら都が耳元で囁いた。

「……いえ、ちょっと」

言われても困る。
清水が望んだわけじゃなくて――。


誰が仕組んだのだろう、と、思う。

「折角来たんだから、何か飲んでいかない?」

ママに誘われるままに、都は清水の隣に座る。

「えっと。
 パパの……紫馬さんのツケにできたりします?」

都は首をかしげながら問う。

「あら、もちろんよ。
 だったら、ドンペリでも空けちゃう?」

ママは茶目っ気たっぷりに、そう言った。


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