苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「そうしたいけど……。
 なんか、後ですっごく恩をきせられそうなんで、やめておきます」

にこりと都は笑って、清水の持つグラスに目をやった。

「私もウィスキー。あ、でも、ロックは苦手なんで水割りで」

「はい、ちょっと待ってね」

唐突に出来た沈黙に耐え切れず、清水は口を開く。

「雨なんですか?」

「うん。
 曇りだったから、今年こそ大丈夫かなーって思ったんだけど。
 やっぱり降り出しちゃった。
 七夕って、狙ったように雨が降るのね」

「……笹でも飾ります?」

「いいわよ、そんなの」

遠い記憶を引っ張り出して、都はくすくす笑う。

「でも、なんか、毎年七夕には清水とこうやって同じ話をしている気がするわ」

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