苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

・愛し君は未だ幼い2(09.05.21)

愛し君は未だ幼い5のお題

2.誰にでも優しいから


「お兄ちゃんっ。
 大変、大変っ」

都さんがバタバタと音を立てながら走ってくる。

「どうしたんですか?」

部屋で勉強していた俺は、シャーペンを置いて立ち上がった。
都さんはランドセルを背負ったまま、息を切らしていた。

都さんはそこでようやく、声を潜めた。

「学校からの帰り道、白瀬さんを見かけたの。
 ね、彼、右腕から血を流していたわよ――。
 だから、私、声を掛けたら、逃げちゃったの」

俺はまだ若い白瀬のことを思い出した。(もちろん、俺よりは年上だが)
そういえば、どこぞの組の奴ともめているなんて噂あったっけ――。

チンピラじゃあるまいし、簡単に別の組と問題を起こすなんて、組としてご法度。
だから、奴は逃げたんだろう。

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