苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
助け出した彼女を、大切な宝石のようにそっと、屋敷へと連れ帰る。

「絶対に今度こそ、私一人で勝てたのにっ。
 大雅ったら、いーっつも邪魔するんだからっ」

俺が食堂に向かうと、都さんは、アイスティーを飲みながら、清水相手に唇を尖らせていた。

「そんなに我侭ばかり言うものじゃありませんよ、都さん。
 次期総長はそれでなくてもお忙しいのに、仕事を増やしてどうするんですか?」

たしなめられても、気持ちがおさまる様子はない。

「だぁってっ」

唇を尖らせている都さんの頭をそっと撫でる。

俺の存在に気づかなかった都さんは、顔をあげた瞬間、頬を朱に染める。
そういう、隠し切れない彼女の気持ちが零れるたびに、愛しさがこみ上げる。

「私のために動いてくれたんでしょう? 分かってますよ」

「ほらねっ」

俺の言葉に気を良くした都さんを見ながら、清水は軽く頭を抱えている。
本当はこんなんじゃいけないって分かってる。

でも。
都さんの我侭すら愛しいから、俺には。

――アナタを怒ることなんて、出来ないよ。


Fin.
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