苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

・愛し君は未だ幼い5(09.06.05)

愛し君は未だ幼い5のお題

5.惚れた弱み、なのだろう


まだ、寒い冬の日。
学校から帰って食堂を覗くと、都さん(小学6年)はホットココアのカップを両手で抱えて、じっとその中を覗き込んでいる。

「ねぇ、清水」

離れたところで本に目を落としていた清水は、その声に顔をあげる。

「なんですか?」

「マシュマロって、作れる?」

ああ、ホットココアの中に浮いていたマシュマロを見つめていたのか。

「……そうですね。
 作れると思いますよ。
 レシピ、調べてみましょうね」

「うんっ」

顔をあげた折に俺の姿が見えたのだろう。
にこやかに笑っている都さんから、清水がゆっくり視線をずらす。

「お帰りなさいませ、次期総長」

立ち上がって丁寧に頭を下げる様は、面白くないくらい、確かに絵になっているようにも思えた。

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