苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「大丈夫よ。
 私、無茶なんてしないし、それに」

いつまでも、大雅に頼るってわけにはいかないじゃない。
夏が明けたら誰かと結婚するって人に。

いつまでも、頼れない。

「それに、何ですか?」

「何でもない。
 もう、暑いから放して」

「……嫌です」

大雅は切なさを溜め込んだ声で、そう、囁いた。

「一人で無理を繰り返すならもう、この手は放しません」

子供の我侭じゃあるまいし。

「お兄ちゃんっ」

私はいい加減にしてよといいたくて顔をあげたのに、大雅は私の額にキスを落とした。
そうやって、パパの真似していつまでも、子供染みたキスをされるのも、それにときめいてしまう自分も、嫌なのに――。

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