苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
きっかり5秒。
彼は不思議な顔をして私を見た。
いや、そんなに見つめられても困るんですけど。

それから、大げさにため息をつく。

「で、そのキノサキってヤツに、何か用?」

「可愛い女の子が、ご指名なの。でも、そんな人居たっけ?」

ヒコは、眉間に皺を寄せた。

「アヤちゃん。もう、受付いいからさ、中で先輩のライブ見てなよ。
俺が代わって上げる」

そういい捨てると、私を置いて外に出て行く。

なんなんだろうなー、全く。

首を傾げていたのは、ほんの少しの間。
だって、ライブ面白いんだもの。
すぐに、夢中になって、前列に行ってしまう私。

それから、数ヶ月の間、気づくことはなかった。

ヒコの本名がキノサキノブヒコだって言う事に――。

Fin.
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