苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
実はホモだったからですー、なんてオチがあってもちっともおかしくないし。
実際、男性からも(恋愛対象ってわけじゃないと思うけど)慕われているし。

正志とだって、仲は良かったはず。

「正志から連絡があったの?」

「いや。そりゃ一番最初に愛しの彼女にメールするんじゃないの?」

からかい半分で、ヒコが応える。

「バカにしてる?」

「まぁね」

煮え切らない会話はいつものことだ。私も、煙草に火をつけた。

もうすぐ、正志の病院に着く――。

「で、どうやって……」

入るの?と、ヒコに視線をやると、しっと指で合図する。
いつの間にか、煙草の火を消して、代わりにケータイ電話を握っていた。

「ああ、西原さん?
俺です。ええ。
今日、お仕事なんですか?そう。今から夜勤。
丁度良かったー。そっちにさ、俺の友達が入院しているって言ってたじゃないですか?
ちょっと、今からお見舞いに行きたいんですよねー。
あ、助かります。
はい。じゃ、また後で」

私には決して向けてくれることの無い、人当たりの良い口調で、ヒコはさらりと話を纏める。

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