苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「じゃあ、外食にでも、行く?」

「まだ、あんまり動きたくないんだけど……」

「分かった!」

私はぽんと手を叩く。

「カップうどん。ね? これなら作れるわ」

お湯を沸かして注ぐだけ、だもの。

「ねぇ、魔界には風邪薬って無いの?」

カップめんの後、みかんを食べながら、キョウが応える。

「そもそも、魔界には風邪なんてものはない」

だ、だから免疫がなくて弱ってたのねー、この悪魔。

「ユリア?
人が弱っているのにその笑顔は、ないんじゃない?」

疲れた声で、キョウが言う。

「だって、無敵の魔王様にも弱点があったんだなーって思ったら」

笑えちゃうじゃん?ってところは、心の中に飲み込んでおく。

キラン、と。
キョウの瞳がよく無い感じに光った。

「いいよ、ユリア。
好きなだけ笑ってれば。
元気になったら……覚えておいてね」

じゃ、と。
触れるだけのキスを落として、また、寝室へと戻っていく。

……しばらく治らなきゃいいのに、と。

密かに私が願ったことは、決して口に出せないささやかな秘密、なのです。

Fin.
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