苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「砂糖菓子より甘い恋」

・接吻痕

「毬?」

雅之は思わず声をあげる。

「なぁに?」

河原で小石を探していた毬は顔をあげて、無邪気に首を傾げた。

秋の夕刻だというのに、雅之の顔はほのかに紅い。

が、そう無邪気に直視され簡単に答えられることでもなかったことに気づいた雅之は、わずか、視線をそらす。

「いや……。
そろそろ帰ろうか?」

毬はとまどいながらも、こくりと頷く。
その白い首筋を飾る紅い痕など、気づくこともなく。

……こんなに見えるところに痕(キスマーク)をつけるなんて、龍星ってどういう趣向なんだろうか……

雅之は内心の動揺を飲み込むのに、ただ、必死になるほかなかった。

Fin.
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