苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
・旅行
目の前に広がる真っ青な海。
出鱈目な青さをぶちまけたような空。
熱気を含んだ空気からも、陽気な音楽が聞こえてきそう。
私は、隣に佇む黒詰めの服のキョウを見上げる。
「……あのね、こういうときにはどこに行くか先に言ってくれないかしら?」
あからさまに、浮いているわよ?
冬服に身を包んだ私たち。
キョウは涼しげな顔で、私を見下ろす。
「寒くて死にそうだからとりあえず暖めてくれって言ったのはユリアじゃない?
それとも、肌で直接あっためて欲しかったってこと?」
からかいの色を多分に含んだ、艶やかな声が降ってくる。
フェイクファーのコートを脱ぎながら、私はとりあえずキョウを睨む。
「Welcome to Mexico!(メキシコへようこそ!)」
彼はすました顔で、丁寧に礼をする。
(次ページへ)
出鱈目な青さをぶちまけたような空。
熱気を含んだ空気からも、陽気な音楽が聞こえてきそう。
私は、隣に佇む黒詰めの服のキョウを見上げる。
「……あのね、こういうときにはどこに行くか先に言ってくれないかしら?」
あからさまに、浮いているわよ?
冬服に身を包んだ私たち。
キョウは涼しげな顔で、私を見下ろす。
「寒くて死にそうだからとりあえず暖めてくれって言ったのはユリアじゃない?
それとも、肌で直接あっためて欲しかったってこと?」
からかいの色を多分に含んだ、艶やかな声が降ってくる。
フェイクファーのコートを脱ぎながら、私はとりあえずキョウを睨む。
「Welcome to Mexico!(メキシコへようこそ!)」
彼はすました顔で、丁寧に礼をする。
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