苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

・迷い猫(09.05.15)

暖かい日差しに誘われるように、毬は京の都を彷徨っていた。

龍星も雅之も御所に出かけているので、毎日のように暇を持て余していたのだ。
季節は秋から冬へと移ろう頃。

行きかう人は皆、背中を丸めて歩いていた。

みゃあ、というか細い鳴き声にびくりとして足を止めた。

やせこけた三毛猫が、ちらりと毬を見てから目を逸らすともう一度みゃあ、と鳴いた。

この夏、勝手に呪を用い、龍星の屋敷を猫屋敷にしてしまった記憶が、苦味とともに毬の胸に去来する。

「おや、姫は猫がお嫌いなんですか?」

道行く青年が足を止め、後ろから声をかけてきた。


毬は

「そういうわけでは……」

と言いかけてから、驚いて顔をあげる。

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