苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
今の服装は町娘のものであって、姫とわかるはずもない。

くるりと振り向いた先で、町人の格好で不敵に笑っていたのは。

そう、帝。

何してらっしゃるんですか、と、声を張り上げることを承知していたのか、一歩先にしいと、人差し指を唇の前に立てて笑う。

「ここで私の正体を明らかにするのであれば、あなたの唇を塞がなければなりませんね」

なんて。
丁寧にしゃべって見せるのさえ、彼のおふざけの一環だ。

「何してらっしゃるんですか」

「あの猫と同じ。
 居場所がなくて彷徨ってるんだよ。
 ああ、毬と同じだって言ったほうがしっくりくるかな?」

笑う瞳は、同罪者同士傷をなめあおうか、なんていう色まで帯びているように思えて、毬は眉をしかめる。

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