苺祭的遊戯(ショートストーリー集)

・おぼれた男4(09.05.30)

君におぼれた哀れな男で5のお題

4.君の笑顔を見るたびに自分だけのものにしたくなるのは、いけないことなのだろうか。


その日も、気まぐれにあの男は俺を清涼殿へと呼ぶ――。
清涼殿に入れるのは、特別な選ばれたものだけ、という現実が、俺に突き刺さる同僚の視線を険しくしていくことを、あの男は知るまい。

もっとも。
そんな視線には幼い頃から晒され続けていて、慣れっこだと返されるかも知れぬな。

そんなことを思いながら、見慣れた部屋へと入っていく。

「相変わらず、龍星は感情一つ見せないんだな」

時折零す、人間臭い台詞で、彼は何を試したいのか。
――俺にはわからない。

「そのようなことはございません。
 帝に置かれましては、本日も――」

「心の篭らない堅苦しい挨拶など、不要であろう、龍星」

あの男――つまり帝は、退屈そうにそう言い捨てて、俺の形ばかりの挨拶さえも遮った。

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