苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「そんなことより、中庭を見てみぬか、龍星」

言われるがままに、中庭に目をやる。
大勢の女官を引き連れて、正妻である千が、幼子とともに戯れていた。

誰かの息子なのだろうか。

幼いその子は未だ歩き始めたばかりで、その頼りない歩きを皆で不安げに眺めているというのが正確なところではあるが。

――毬?

その、女官の中に、見覚えのある女性が居て、くらりとした。

「ほお、ようやく気づいたか。
 退屈そうだったので、たまには御所で遊んでみぬかと誘ったのだよ」

俺の表情の変化ばかりを眺めていたのだろう。

帝は満足げに笑っている。

「……お暇なんですね」

「暇をどう潰すか、そればかり考えていられる時間が長ければ長いほど、『平安の世』というのじゃそうな」

「……誰がそんな戯言を」

「それはもちろん、あそこで一際可愛く笑っている――想い人が」

さらりと、そう口にした。

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