苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
ぱちん、と。
扇を閉じて付き人を呼んだのは帝。

「龍星は今日はもう帰るそうだ。
 折角だから、毬をここに呼んでやれ」

「かしこまりました」

しばらくすると、毬がやってくる。
ふうわりと微笑む彼女の身体には、赤子特有の甘い香りが残っていた。

「龍、ここに居たのね?」

無邪気な微笑みは愛らしいものだが、龍星は不安を感じずにはいられない。
帝の視線に晒されていることにさえ、我慢出来なかった。

「帰りましょう」

乱暴に近い強引さで彼女の手を掴む。

(次ページへ)
< 71 / 196 >

この作品をシェア

pagetop