苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
「Melty Kiss」
・ダックスフンド
都さん(10歳)は突然、俺の目を見てそう言った。
「はい?」
唐突に突きつけられた名詞の意図がイマイチ分からずに俺が首を傾げると、ランドセルを背負ったまま、都さんは唇を尖らせる。
そうして、ふっと、首をかしげた。
「お兄ちゃん、私、間違ってる?」
「だから、何が、ですか?」
「ダックスフンド」
「そういう犬種の犬は、確かに存在しますけど」
「じゃあ、買って」
まるで、当たり前のことのように要求されても困るんですけど。
「都さん、犬ですよ、犬。
ぬいぐるみじゃなくて、生きているんですから。
きちんと面倒見れます?」
だいたい、ヤクザの本家にダックスフンドって、あまりにも不釣合いなんじゃ……。
「ダメなの? ねぇ、さっき学校帰りに見つけたの。可愛い茶色い犬。
だから、連れている人に名前を聞いたの。
ね、お願い。買って?」
「買うんじゃなくて、飼うんですよね?」
同じ発声の二つの言葉を並べて確認してみる。
(次ページへ)
「はい?」
唐突に突きつけられた名詞の意図がイマイチ分からずに俺が首を傾げると、ランドセルを背負ったまま、都さんは唇を尖らせる。
そうして、ふっと、首をかしげた。
「お兄ちゃん、私、間違ってる?」
「だから、何が、ですか?」
「ダックスフンド」
「そういう犬種の犬は、確かに存在しますけど」
「じゃあ、買って」
まるで、当たり前のことのように要求されても困るんですけど。
「都さん、犬ですよ、犬。
ぬいぐるみじゃなくて、生きているんですから。
きちんと面倒見れます?」
だいたい、ヤクザの本家にダックスフンドって、あまりにも不釣合いなんじゃ……。
「ダメなの? ねぇ、さっき学校帰りに見つけたの。可愛い茶色い犬。
だから、連れている人に名前を聞いたの。
ね、お願い。買って?」
「買うんじゃなくて、飼うんですよね?」
同じ発声の二つの言葉を並べて確認してみる。
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