苺祭的遊戯(ショートストーリー集)
『だから、もう、泣かないで……』

切なさを溜め込んだ声の意味に、都が気づいたのかどうか。

『だってさー』

と、折り紙を三角に折りながら、唇を尖らせている。

『都さんが織姫でも、そうするでしょう?
 雨が降ったくらいで、諦めますか?』

『みやちゃんは、諦めないけどさー』

『ほら。
 大丈夫。
 そんなに泣いて心配しなくても、二人は色々考えて、上手いこと逢ってますって。
 ね?』

伝説の長距離恋愛の達人たちも、色々と策を練るのに大忙しなんだなと清水はほくそ笑む。
そこまでの策略者たちなら、毎日のように逢瀬を楽しんでいそうなものだが……。


清水にはここまで都の感情に寄り添って話を練り上げることなんて到底出来ない。

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